Jユースチーム出身の僕が伝えるサッカー漫画「アオアシ」の舞台

 


アオアシ』とは?

 

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アオアシ は2015年6月から「ビッグコミックスピリッツ」で連載されているサッカー漫画です。作者は小林有吾さん、監修はスポーツライター飯塚健司さんがされています。2020年2月現在で17巻が出版されており、累計で300万部突破の人気作品になります。

 

アオアシには二つの特徴があります。それは二つの「舞台」が他のサッカー漫画と異なるからです。

一つは戦うカテゴリーである ”舞台” がJユースチームとしたところ。

二つ目は主役が担う ”舞台” ポジジョンが「サイドバック」であるところです。

 

サッカー漫画の代表作である「キャプテン翼」は、カテゴリーは少年サッカーチームであり、主人公のポジションは攻撃的ミッドフィルダーです。

また同じく人気漫画の「シュート」はカテゴリーが高校サッカー部であり、主人公のポジションはセンターフォワードです。

 

この異なる舞台の特徴と魅力を纏めてみました。

 

舞台1.プロへの登竜門「Jユースチーム」

1993年にJリーグが開幕したときに、Jリーグに加盟するチームには、下部組織といわれる育成チームの存在が義務づけられました。これはヨーロッパなどのサッカー先進国では当たり前であり、それこそがリーグのレベルを上げる屋台骨になります。その高校年代のチームが「Jユースチーム」です。

90年代~2000年代初頭は、まだまだ高体連(いわゆる高校のサッカー部)からプロ入りする人が多かったのですが、徐々にJユースチームからプロ入りする人の割合が増加し、今では逆転しています。またWカップメンバーを見ても高体連出身選手が大半を占めていたのが、前回の2018年の大会では約半数がユースチーム出身となっています。

現在は最もプロ入りへの近道とされるのがJユースチームに所属し、そこで実力を認められる事となりました。

 

私は90年代にJユースチームに所属していました。高校サッカー部との最大の違いは「目的」にあると思います。Jユースチームの目的は明確です。「プロになる事」です。チーム側の視点で考えると「トップチームで活躍する選手を育てること」です。

それに対し、高校サッカー部で主とする目的は「全国大会出場」や「日本一になる」事です。高校側からの視点では「全国大会出て学校名を宣伝する事」「スポーツを通じて社会性をもった人間を育てる事」といったところです。

Jユースチームには良くも悪く「目的」となるような大会がありません。「クラブユース選手権」のような大会はありますが、そこで勝つことが目的ではありません。あくまで自身の実力を証明する為の大会です。

 

本作の面白さは、このようなある種、冷徹で合理的な場が ”舞台” となり、青臭さや泥臭さ・一種の幼稚さを併せ持つ高校年代の情熱が表現されるところです。

 

舞台2.魅惑のポジション「サイドバック

サッカーにおいて最も存在が薄いポジションといっても過言ではありません。もちろんチームスポーツですから無駄なポジションなどなく、どのポジションも重要です。しかし、得点やアシストを多く取るわけでもなく、守りの中心にいるわけでもありません。

少年サッカーでは、足が速い子は点を多くとる「センターフォワード」。技術に秀でている子はゲームを支配する「攻撃的ミッドフィルダー」。体が大きく強い子は「センターバック」というのが相場です。

 サイドバックの特徴とは?

 

私はサイドバックウイングバックを主戦場としてサッカーをしていましたが、攻撃時にどのように参加するかが醍醐味の一つでした。どのタイミングで、どのポジションでボールを受けるかが人によって全く異なります。それがサイドバックとしてのセンスの見せ所です。要はボールを受けてどうするか、よりもボールをどこで受けるかが重要なポジションです。

 

昨年のJリーグを制した横浜Fマリノスの圧倒的な攻撃力を生み出した一因もサイドバックにありました。サイドバックが流動的に中央へポジションを移しボールを受けることにより、相手の守備陣を混乱させ決定的なパスを供給する事ができたのです。

足下の技術が問われるMF、得点力が問われるFW、対人の強さが求められるセンターバックに対し、サイドバック動きの質が問われるポジションになるのです。

  このポジションを舞台とする事の魅力

キャプテン翼では「ドライブシュート」、シュートでは「幻の左」と、主人公の ”技” が一つのポイントでした。その技の生まれた背景や、その威力が生き生きと描かれました。一方で本書では「動きの質」が問われるポジションが舞台です。その為、「視野」や「絞り」などの実態に即した ”戦術” がテーマとされています。そこに派手さはありませんが、サッカーの魅力や奥深さは存分に表してくれています。

 

まとめ

個人至上主義となる「Jユースチーム」というカテゴリーで、チーム戦術に即した動きの質が求められる「サイドバック」というポジション。相反する2つの舞台こそがアオアシの魅力の源泉であることは確かです!